2023 0605

いつもと同じ時間の出社して、いつもと同じ時間に退社した。「帰る時に、ついでにポストに出しておいて。」と、上司から茶封筒を渡された。息を少し吸って、「お先に失礼します。」と言って会社を出た。ポストに向かうために、遠回りして駅に向かう必要があるのは分かっていた。だが、ポストの、あの朱色の面構えだけが浮かんできて、自分とポストの座標が結びつかない。オフィスはマジックミラーになっていて、内側から外の様子はよく見えるけれど、外側から中の様子はかなり近づかないと見えない。その硝子の前で、どこに向かって歩けばいいのか分からず、あたふたするのは避けたい。内側から道が分からなくて慌てていると思われたくないからである。そして、僕は何を思ったか茶封筒と道を交互に見た。僕が持っているのは地図では無い。茶封筒である。なんとかポストに着いた。ここからも試練が待っていた。どちらの投函口に入れるのか判断がつかないのだ。左の赤字を見ると、「はがき 手紙」と書いてある。右の青字は、「速達郵便、往復はがき、レターパック」と書かれている。自分が持っている茶封筒はどちらに所属するのか分からない。嫌だけれど電話で上司に聞くか。それとも勢いでどちらかに入れてしまうか。後者はリスクが高い。仮に、間違った方に投函し、送り返されてしまう事だけは避けたい。もう本当に早く帰りたかった。どれを選んでも嫌な未来が待ち受けていそうだったから、ポストの前で立ち尽くした。「なに大丈夫?」と左前から声をかけられ茶封筒から視線を上げた。回収のおじさんだった。「これ、どっちに入れたらいいか分かんなくて。」「あぁこれやったら左に入れたらいいけど、どっちにいれても回収した後の選別で分けられるから問題ないで。」「すんません。助かりました。」と言った僕に、おじさんは「ありがとう」と言った。感謝をするのはこちらの方である。こうした事象に巡り会う度に、これからも生きていけると思わせられてしまう。投函を済ませ、駅に向かった。今日は、このまま眼科に行く予定があった。それが今日一日で、右目の充血と目やには治まってしまったため、キャンセルの電話をかけた。受付の人から、「予約は12日に入っていますよ」と言われた。確かに「6/5 18時~」の枠にタップした気がするけれど、予約は12日に入っていた。疲れていたんだなと適当な解釈で済ませた。