2023 1228

 初老の男と口論になった。朝の通勤電車でのことだった。毎朝見ていた顔に向けて、苛立ちを言葉に込めて音にして男にぶつけた。毎朝、同じ時間の同じ車両に乗り、同じく天王寺で降りる。だから、互いに顔は知っていたと思う。男と初めて言葉を交わしたことになる。戦争に行けば、話したことも会ったこともない人間との初めての関わりが、殺し合いになるんだと妙に納得してしまった。ふとした隙に、白い不織布マスクをした、日に焼けた男の顔が浮かんでくる。「ぶつかってくんなよ」「オッサン」「あ?」「お前みたいなアホ」「来いよ」