2023 1009

 会社を辞める旨を、メールで社長と先輩に送信した。夜、キッチンにいた母親にそのまま伝えると、「死ね」と言われた。「どこに行っても続かない。誰も雇わん。今より酷い待遇の所で働くことになる。」とも言われた。どれも、その通りなのだと思う。そう言われても仕方ないと思う。僕には、「キャリア」みたいなものの欠片もない。母からすれば、何とか大学まで出したひとり息子が、この仕上がりだと気持が収まらないのだ。偶に、「所帯を持ち、安定した収入源のある兄か姉」が家にいてくれればと思うことがある。それなら、僕1人くらいこんな具合でも目を瞑るんじゃないかと思うからだ。情けないし、親には申し訳ない。けれど、自分のことをこれ以上、嫌いになりたくない。職場の上司が求める形に自分で自分を組織できない。曲げてはいけない方向に、曲げると取り返しのつかない仕方で壊れてしまう。それを「変化」「成長」と形容することもあるが、それを自分に強いることが不憫でならない。今回のメールは、「お前の言いなりになりたくない。」と言う意思表明になる。「経歴のよく分からない君を会社は雇ってくれているでしょ。」と両親に言われギクリとした。確かに、会社は新入社員である僕を育てようと苦心しているし工夫もあるんだろう。それは伝わってくる。 

 だが、感情に則して言えば、気色が悪いのだ。何もかも。オフィスが吐き気なのだ。

 家を出ることにした。金は無いし、次の仕事も決まっていない。取り返しのつかない方向に向かってずんずんひた走っているように思う。何とか出来る自分が想像できない。こんな想念も自分の中にある。明け透けに言ってしまえば、死ねばこの不可解な生を取り巻く諸般の煩わしさを一掃できるというものだ。性も血も金も肉も置き去りにして、何にも絡め取られず去ることができる。だが、怖くてしかたが無い。変な形で蘇生され後遺症など残ればそれこそ生き地獄だ。生きることも死ぬことも恐ろしい。スキーも辞め、大工も辞め鳥取を去り、次は会社を辞めようとしている。ここ数年辞めてばかりだ。それが何だと言うんだ。