2023 0805

 浴衣姿の女性が通り過ぎていくのがデスクから見えた。どこかでお祭りがあるんだろうと思った。帰り、ATMに寄ろうと天王寺で改札を出た。駅と商業施設を結ぶ歩道橋の欄干に、沿うようにして人が層を成していた。その人達の視線は、打ち上がる花火に向けられていた。花火の動画なんて撮っても見返さないでしょと人に言ったことがある。見返すよとその人は言った。その人が、どんな髪型だったか思い出せない。何でラインをすることになったのかも思い出せない。電車が遅れていて、最寄り駅から自宅近くまで僕を運ぶはずだったバスに置いていかれた。山本直樹の『田舎』を読みながら歩いて帰った。辺りはもう暗いから外灯から離れると紙面が見えなくなる。次の外灯までは天を仰ぎながら歩を進めた。星だった。