2023 1019

 中上健次の『枯木灘』を読んでいる。和歌山出身の作家で有吉佐和子中上健次は、年配の人の多くが知っていると思う。『枯木灘』を読んでいると、鳥取で木こりのアルバイトをしていたことを思い出す。文章から立ち上がる景観が、鳥取で経験したものばかりなことに気づく。文章が体験した景観、息づかいを呼び起こすし、実際に見た景観、息づかいが文章を補う。

 10月に入ってから、やたらと昔の些末なことを思い出す。保育所から小学5年生まで通っていたスイミングスクールのことを思い出した。飛び込み台のある場所から背泳ぎでスタートして、レーンに沿って泳いでいく。プールの端、25メートル付近にはステンドグラス風のはめ殺し窓が付けられている。西陽が色ガラスを透かして、顔を覆った水の上を色が揺らめいていた。